BMWの美形スタディ「ツーリングクーペ」発表は、サヨナラ「Z4」の序曲だった!
掲載 carview! 文:木村 好宏/写真:BMW AG 105
掲載 carview! 文:木村 好宏/写真:BMW AG 105
「コンセプト ツーリング クーペ」の話をスタートする前に、ベースとなった「BMW Z4」と姉妹車「トヨタ GRスープラ」誕生の裏話をしておこう。
2002年に登場した「Z4ロードスター」はBMWのスポーツシンボルでありながら2009年の2世代目(E89)でその寿命が尽きようとしていた。2002年以来使用しているプラットフォームが古く、PHEVはおろかHEVの可能性もない。同社の総販売台数のわずか0.7%、わずか1万2千台以下と、元々生産台数の少ない2シーターロードスターは2018年には消滅が危惧されていたのだ。
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ところが2012年、「スープラ」の再生を考えていたトヨタとプラットフォームを共有することによってコストシェアが実現する。その結果Z4は3世代目(G29)として今日まで生きながらえることができたのである。しかしCO2排出量はエントリーモデルでも161g/kmと、95g/kmの基準値から足を引っ張っており、現在では電動パワートレーンをもつ後継モデルの開発が急がれている状況なのだ。
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そんな背景で今年BMWが主催するクラシックカー・コンクール「コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステ2023」に現れたのが「コンセプト ツーリング クーペ」である。昔からデザイナーが憧れているシューティングブレーク、すなわち英国の紳士の狩猟目的のために企画された2ドア+ハッチバックのスポーツ・ワゴンだ。
<写真:コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステ2023でのお披露目風景>
このカテゴリーはあまりに趣味性が高く、過去に販売された歴史上のモデルは全て短命に終わっている。その良い(悪い)例を紐解くと、古くは我が国の「ホンダ アコード エアロデッキ」、近年では「フェラーリ GTC 4ルッソ」などがある。似たようなモデルだが4ドアハッチバックの「ポルシェ・パナメーラ・スポーツ・ツーリスモ」も結局、当てが外れて間もなく生産を中止すると噂されている。
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BMWも例外ではなく、このカテゴリーを狙った「Z3クーペ」はスニーカーとあだ名が付き、結局は売れなかった。BMWのデザインチームもそれは承知の上で、冒頭に述べたように間もなく生産販売が終了するZ4ロードスターをベースにして、BMWデザイナーが長く夢見ていたシューティングブレークを具体化して有終の美を飾ろうとしたのだろう。
「スパークリングラリオ」と名付けられたメタリック・ブロンズカラーを纏った全長4.3m×高さ1.3mのボディのベースはZ4で、ウエストラインから上にクーペ状のキャビンを構築したワンオフのコンセプトモデルである。
デザインはエイドリアン・ホーイドンクが指揮するBMWデザインチームと、トリノのカロッツェリア「スーパースティーレ」がハンドメイドで完成させた。ロングノーズとショートデッキの典型的なシューティングブレークのプロポーションを形成している。
もちろん2シーターで、ハッチバックゲートの奥にはフルレザーのラゲッジルームが用意され、専用のスケドーニ製バッグが用意されている。また搭載されているエンジンは「Z4 M4.0i」と同一で、3L直列6気筒ターボ(340ps)と8速ATを組み合わせて後輪を駆動する。タイヤは前20/後21インチのピレリPゼロが装着されている。
<写真:モデナの工房「スケドーニ」が手掛けたバッグと、ポルトローナウラウ社が手掛けたレザー内装>
ツーリングクーペの仕上がりは非常に素晴らしく、またボディの素材も構造も特別なものはなく、ホモロゲーションの観点から見ても直ぐに量産化しても不思議ではない。ひょっとするとファイナルエディションとして500台から1000台くらいの限定販売も考えられる。想定価格は安くても15万ユーロ(約2350万円)ほどになるだろう。
最後に現行Z4(G29)の行方だが、消息通の関係者らの取材から2025年10月には生産が中止されるはず、という情報が得られているが、まだ2年先の話でBMWからは正式な発表は行われていない。
ポルシェは2025年からボクスターの電動モデルを発売することを発表しているが、ボクスターはポルシェの総生産台数の6.8%、約2万台以上を占めており、同時に911シリーズとの共用する部品も多く、BMWとは事情が異なる。
ロードスターの電動化は短いホイールベース故に既存のスケートボード状のEVプラットフォームを転用することはできない。ポルシェは「ミッションR」で示したようにパッセンジャー背後にミッドシップカーのようにバッテリーを搭載しているが、BMWではこのようなEVスポ―ツ専用プラットフォームを開発することは難しいのだ。
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考えられる解決方法としてはスープラのケースのようにトヨタがEVスポーツカーをBMWと共同開発するかどうかだが、トヨタは自前でEVスポーツを企画しており、その可能性は低そうである。
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